【台湾史を巡る】台湾の智の中心、国立台湾大学で学生の生活を覗く
こんにちは。もちだもじです。
10 月の後半に一週間ほど仕事を休んで台湾に遊びに行ってきました。
「行きたいところ全部行く」をテーマに、一週間で台湾の北から南まで、海岸から山奥まで様々な場所を旅してきました。
今後数回に分けて、訪れた場所を台湾史に絡め、ご紹介していければと思います。
さて、台湾に着いて最初に訪れたのはこちら。 僕も留学時代に通った、国立台湾大学です。
旅行で大学に行くというのはあまり馴染みがないかもしれませんが、広大な土地に歴史ある建築物も多い台湾大学は、実は旅行中の隙間時間に見て回るのにちょうどよい、お手軽観光スポットです。
もちろん旅程に組み込んでおいても良いですが、旅にありがちな「同行者が体調を崩して遠出できない」「雨が降って予定が狂ってしまった」「行こうと思っていたお店が休業していた」というときには、ぜひ台湾大学を代替案にしてみてください。
台湾大学って?
台湾大学は、日本統治時代中期の 1928 年 3 月 17 日に創立され、当時は台北帝国大学と呼ばれていました。つまり現在の東京大学や京都大学をはじめとした「旧帝国大学」であり、当時の台湾で唯一の大学でした。
当然ながら現在の台湾でも、学問の最高峰であり、各業界に未来の台湾を担う人材を輩出している超エリート大学です。
1945 年に第二次世界大戦が終わると、台湾大学は日本から当時の政府に引き継がれ、国立台湾大学へと改制されました。
本キャンパスは MRT(地下鉄)公館駅すぐ近くにありますが、その他台湾各地にキャンパスや研究施設を持ち、なんと台湾全土のうち約 1%にあたる面積が国立台湾大学の所有となっています。
正門
まずは正門から入っていきます。警備所のようなところがありますが、特に許可などをとる必要はありません。
誰でも自由に出入りができますので、自転車に気をつけながら、堂々と入っていきます。
キャンパス内は非常に広いので、所々に設置されている地図や案内板を見て進まないとすぐに迷ってしまいます。
椰林大道
台湾大学の正門から敷地内に入ると、最初に通ることになるのがこの椰林大道です。
広くて長い一本道で、自動車の行き来も多くないので、晴れた日には開放感溢れる写真を撮ることができます。
これがいわゆる大学内のメインストリートで、この椰林大道を大動脈に、キャンパス内の移動が行われています。
両側に並んでいる椰子の木は、全長数十メートルを超す長さ。真下に立って見上げるだけでも壮観ですが、風の強い日には稀に巨大な樹皮が剥がれ落ちてくることがあるので、天気によっては注意をしたほうが良いかもしれません。
校史館
椰林大道の途中の校舎を見て回ると、日本語文学科の校舎に辿り着きます。 実はこの日本語文学科の校舎の 2 階は校史館になっていて、台湾大学が設立された 1928 年から現在までの台湾大学の歴史について展示がされています。
展示に関する解説はすべて中国語ですが、パンフレットは日本語のものも置いてありました。しかし展示品自体は中国語が読めなくても大凡は理解できるものになっているため、戦前の大学の雰囲気を知りたい方は、覗いてみてはいかがでしょうか。
開館時間は火曜日を除く、月曜日から日曜日の午前 9 時から午後 5 時までです。
台湾大学図書館
椰林大道に沿って、突き当りまで進むと出会うのがこちらの図書館。
左右対称の荘厳な造りは、どこか西洋の教会か何かのようにも思われます。
蔵書は大部分が中国語で、英語の書籍も数多くありますが、中には日本語の書籍も置かれています。
一般の閲覧エリアには観光客も入ることができますが、受付でパスポートなどの提示が必要となります。館内は天井が高く、時期によっては美術品の展示を行っていることもありました。
1 階には蔵書の検索用にパソコンが置かれていますが、入力は注音符号がデフォルトになっていますので、我々外国人にとっては少し操作が難しいかもしれません。
正面玄関を逸れて、外階段から地下へ降りていくと、自習室があります。
試験前には大勢の学生で賑わいますが、さすが台湾大学の学生だけあって、みんな熱心に勉強をしています。(受付の職員の方が厳しい方というのも要因の一つかもしれません……笑)
学生証が必要なため、もちろん観光客は入ることができません。 邪魔をしないように外から覗くだけにしましょう。
また、地下には原住民資料館が併設されています。
入場には名簿への記名が必要ですが、中には台湾原住民に関する書籍や動画などの資料が展示、販売されています。
ちなみに、台湾大学図書館は夜に訪れると窓からの灯りがとても綺麗に見えます。
一方で朝は近所のお年寄りが集まって図書館前で太極拳をしており、台湾語の飛び交う、陽気で元気な台湾らしい雰囲気を感じることができます。
学生活動中心
図書館のすぐ横に構えられているのが通称・活大(フオダー)と呼ばれる建物です。
2 階はサークルの活動場所になっていますが、1 階は食堂になっていて、朝食や昼食の時間には多くの学生で大混雑します。
お店は簡単な軽食を提供している店から、チェーンの餃子屋、マクドナルドにファミリーマートなど、馴染みやすい店が多く、安く食べられる学生にとって安心の施設です。 (ここのパン屋のおばちゃんが基本的に中国語ではなく台湾語で話しかけてくるので、聞き取れずにかなり困ったという思い出があります) 中にはどこから来たのか、昼寝をしているお爺ちゃんお婆ちゃんも昼寝をしに来ています。
本当に自由だなあ……。
活大の周囲にはおびただしい数の自転車が停めてありますが、これは放置自転車というわけではありません。放置してある自転車は夜間に定期的に巡回している回収車に回収されてしまいます。
つまりこれほどの学生が、大学内を自転車で移動しているのです。
これだけの自転車が停めてあると、取り違えてしまいそうですが、そのようなことはありません。一台一台の自転車を見ていくと、不思議なことに綺麗な自転車は一台もなく、ほとんどの自転車はスプレーでペイントされています。
台湾大学の学生は自転車を買うと同時に新車にスプレーで落書きをし、自転車の取り違えを防止すると同時に、敢えて汚してしまうことで、せっかく買った自転車を盗まれないようにしているそうです。
小小福・松餅店
次は図書館エリアから離れて横道を歩いてみます。
図書館に向かって右側の小道に入っていくと、広場に多くの人々が集まっている場所が見えました。しかも多くは学生ではなく、明らかに近所のおじさん方……。
ここは小さな売店で、台湾大学農学部が収穫した農作物や台湾の特産品などを販売している売店です。
特別珍しいものを売っているわけではないのですが、近隣住民の休憩所としては最適なようです。
そこから 30 メートルほど離れたところには木製の小屋がありますが、そちらは若者が中心のよう。特に外国人留学生が目立ちます。
この小屋は松餅(ワッフル)を売っているお店で、小腹が空いたときに学生が集まっては、熱いワッフルを頬張っています。
僕自身も、近くの教室で中国語の授業を受けていたときには毎朝世界各地から来た同級生と一緒にこの売店に集まっては、ワッフルにかじりついていました。
種類は色々ですが、ほとんどの種類は日本円にして 200 円以下で食べることができます。
さらに進んでいくと、また小さな食事スペースと売店が見えてきます。
ここは小小福(シャオシャオフー)と呼ばれており、前述の活大と同じく学生の生活を支える施設です。活大ほどではありませんが、数店の飲食店と、文具や日用品を揃えた売店が併設されています。
売店では台湾大学の略称である「NTU」の文字や、台湾大学の校章が入ったパーカーや T シャツ、ノートなどの記念品が販売されていて、ことパーカーなどの衣類に関しては、台湾大学の学生かなりの割合で日常的に使用しています。 (当然ですが、台湾大学の学生というのは一種のステータスなのでしょう)
一つ当たりの値段はそれほど安くはありませんが、記念に買っていかれてもよいでしょう。
傅鐘
椰林大道の中間付近に見える小さな鐘です。
これは第四代の校長が設置した鐘で、台湾大学の校章にも用いられている、いわば台湾大学の象徴的な建造物です。
あまり目立つものではないのですが、台湾大学の知性の象徴ともいえる鐘は、台湾の地方からの観光客にとっては一目見ておくべきもので、この日も鐘の前でポーズをとるお父さんの姿がありました。
総合体育館方面
続いて、図書館を向いて椰林大道を左に曲がったエリアを紹介します。
道を戻って正門をはいってすぐの道を折れると、左手にテニスコートが見えます。
右手に見えるのが博雅教学館と呼ばれる、比較的新しい教室棟です。
さらに進みます。左手に見えるグラウンドでは体育の授業でラグビーが、右手ではバスケットボールとバレーボールが行われていました。体育の授業なので男女混合で行われていましたが、日本の学生なら気恥ずかしくて手を抜いてしまいそうなところ、台湾大学の学生はみんな真面目に授業に取り組んでいます。
台湾では特にバスケットボールが人気です。町中にバスケットコートがあることも多く、熱心に練習をしています。(人気の理由は漫画「スラムダンク」だとも言われます)
次に見えるのは野球場です。僕も留学時代にはチームに所属して、週 2 回の練習をしていました。
台湾大学では学科ごとにチームがあり、年に一度、台大杯と呼ばれる硬式野球の大会が行われています。基本的に学科のチームは初心者の集まりですが、中には校隊(シャオドゥイ)という、日本でいう大学の体育会野球部に所属している学生もいます。
さらには台湾では慢塁(マンレイ)という、ピッチャーが山なりのボールを投げるソフトボール競技も人気で、たびたび野球場で練習をしているため、野球初心者から上級者、ソフトボール選手が一か所で入り乱れて練習をしているおり、野球場内は非常に危険です(笑)
さて、突き当りに見えるのが総合体育館です。
特に大きく変わったところのない外見ですが、中は非常に広く、日本人アーティストの台湾公演などでもたびたび利用されています。僕が 5 年前に台湾にいたころは、日本でいうコミケのようなイベントが開催されており、コスプレをした参加者が撮影会を行っていました。
また卒業シーズンにはキャンパス全体の卒業式も、この総合体育館で行われるとのことです。
酔月湖
敷地の中心あたりに位置する大きめの水辺は酔月湖と呼ばれています。
前述の博雅教学館の裏側に位置し、芝生が敷かれた広場で取り囲むようになっています。
かなり開けた場所で自然が多く、ベンチなどの座る場所も多いので、近所のお年寄りが集まってきては世間話をしています。
湖の中心には中国風の建造物が建てられており、その向こうにはビル街と、景色を眺めているだけで数十分は楽しめそうな場所です。
夜には月明かりの下、水面が静かに揺れるロマンチックな場所となるため、大学敷地内の寮に住むカップルは、夜中にそれぞれの寮を抜け出しては酔月湖の周囲を散歩するのだとか。
台湾一の大都市の、それも大学内にいるとは思えない景色を楽しむことができる場所です。
岸辺にはアヒルやカモの住む小屋があり、天気が良い日には水面を泳いでいる姿が見られるほか、岩場には亀、木の上にはリスなど、敷地内に多様な生態系があるのも台湾大学の魅力です。
一通り見て回ったら、学生向けの飲食街「後門」へ
大学敷地内は非常に広いので、一通り見て回るだけでもくたくたになってしまいます。
休憩や食べ歩きは、正門近くの公館夜市が有名ですが、穴場は「後門」と呼ばれる、台湾大学裏の飲食店街です。
場所は図書館に向かって左奥の方向、駅で言うと科技大楼駅の方向です。
門の近くには語言中心(言語センター)があるので、大学内の標識を辿りながら、学外へ出る門を目指していきます。
こちらが台湾大学の裏門。一見、何もないただの校門です。
外からの風景はこんな感じです。 手前に腰かけているお婆さんは、いつもこの門に座って、お手製のジュースを販売しています。
ちなみにこのお婆さん、僕が 5 年前に留学していたときに話したことがありますが、中国語、台湾語に加え、いわゆる戦前の日本統治時代に生まれた日本語世代で、日本語と英語を話すことができます。 (日本語世代といえば 1945 年以前に日本語教育を受けていた世代なので、すでに 80 歳近い計算になります。この日はずっとスマホをいじっていました。台湾のお婆ちゃん、恐るべし……!)
横断歩道を渡り、右に折れると、左側に飲食店街が見えてきます。
昼時になると大量の学生でごった返すため、大学の昼休みの時間は避けたほうがよいでしょう。
通りには庶民的な台湾料理から、和食、イタリアンのほか、客家料理(客家は台湾人の中の一つの族群)など様々なレストランがあります。
おすすめは色々ありますが、まずはこちらのカレー屋。
100 元程度で美味しいカレーが食べられ、ドリンクバーもついてきます。 (とは言っても甘いジュースしかないのですが……)
昼だけでなく夜も人気のお店です。
店前の鉄板でチャーハンを焼いているこちらのお店もおすすめ。 メニューはチャーハンだけですが、多種類のチャーハンを大量に食べさせてくれます。
通りの奥に進んでいくと見えるのが刀削麺のお店。
伝統的なつくり方で、店先で麺を削って茹でているこのお店は、本場の食感を味わうことができます。
そして個人的に一番のおすすめはこちらの「四面八方」。
水餃子やルーローハンなど、日本人の口に合う台湾料理を、安価に食べさせてくれます。 学生たちはより安い乾麺などを食べることが多いようです。
ここのルーローハンは家庭的で絶品なのですが、夜遅くに行くと売り切れていることがありますので、昼か夕方早くに行くのがよいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 今回は日本統治時代からの歴史を持つ国立台湾大学について、見どころをまとめてみました。
はじめにも書いたとおり、海外旅行で大学に行くというのはあまり馴染みがないかもしれませんが、台湾大学に関しては、その広さと見どころの多さゆえに、観光として訪れても退屈しない場所になっています。
また公館夜市、客家文化主題公園のほか、周辺の駅には中正記念堂駅の中正記念堂、台電大楼駅の師大夜市、東門駅の永康街など、数多くの観光スポットがあるので、ぜひ合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。